箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

190331 日記(無職の終わりに寄せて)

 2019年2月で東京での前職を辞し末に引っ越して、1ヶ月間半にわたって無職として大阪で暮らしてきた。

  3月は寂しい月だった。1年間の連載『七尾さんたちのこと』プロジェクトを18日に完遂し、数日は達成感に充ちていた。頭のなかの世界が現実世界に解き放たれた喜びは、しかし瞬く間に霧散する。書いたものはもともとあまり読み返さないのだが(出来の善し悪しを脇にやって、長ければ長いだけ時間がかかるのだ)いったんの完成を迎えると、自分と切り離されてしまって、存在感が限りなくゼロになる。物理書籍版のために再読、推敲をしなければならないのだが。

 2011年(つまり、大学1回生だ)にアイドルマスターのアニメを観てから、2014年春にミリオンライブの二次創作小説を書き始めて今に至る、と自己紹介しがちだが、意図的に情報を落としている。大学1回生から所属していた舞台系サークルに、2013年秋を境に、めっきり顔を出さなくなる。作るべきものを作ってしまった、達成感に打ちのめされてしまっていた。2013年秋から2014年春の間の半年は、おそらく小説を読んでいたのだろうが、大学生活のなかでもっとも記憶に薄い半年間となった。

 純度を高めれば高めるほど、吐き出したあとに残る空白は大きくなる。

 3月はそういう月だった。SFや現代小説、あるいはドラマや映画を浴びてみても空っぽは埋められない。自分の手でなにかを為さなければ埋まらない穴だ。そう知っていても、怠惰に、本を読んでいた。無職には向いていなかったのだろう。目的なく生きていけるほどのタフさは持っていなかったけれど、新しい目的のために直ちにリスタートできるほどスマートでもなかった。あるいは、あと何ヶ月か続いたら違ったのだろうか。ここ数日はそんな空想をしていた。答えはわからない。無職は今日で終わる。そういう感傷を切り離して、置いていくためにこのエントリを書いた。

 4月から新しい職場ではたらく。片道30分の職場は、これまでの横浜線-京浜東北線の1時間よりずっとずっと近くなる。試しに時間を合わせて通勤の練習をしてみたが、ラッシュの混雑具合もせいぜい鶴見-川崎間くらいだ。蒲田-品川間と比べるとあまりの「疎」に笑いが出てきた。

 新しい目標もある。最短で1年間半の、うっかりするとそれ以上の、これも大がかりなプロジェクトだ。その先には、どんな寂しさがあるのだろう。いったいそいつはどんな感傷をもたらすんだろうか。

 次に新しい自分になる日が楽しみだ。