箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

220930 ブンカジ練習問題⑦-2

問二:遠隔型の語り手
遠隔型の語り手、〈壁にとまったハエ〉のPOVを用いて、同じ物語(※1)を綴ること。(四〇〇〜七〇〇字)

 鴨川の左岸では三人の男たちが戯れていた。川を右手に遊歩道に立てば左手に彼ら。二人は遊歩道沿いに並び、三人目は彼らに対して川の反対側。三人は、架空の正三角形の頂点に位置していた。
 一番目の男と二番目の男は木片を互いに行き来させる。真上からその軌道を見れば、正三角形の一辺が鴨川に対してちょうど平行に描かれる。青々と茂る芝の上を走る、淡い色の木片の数はいまは二。二点間を行き来する頻度は低く、ドット同士の間隔が開いた、粗い破線を思い浮かばせる。
 三人の戯れは正三角形の辺と頂点のみには留まらない。三番目の男がいる。三番目の頂点から木片の軌道に対してやはり平行に、追加の直線が伸びている。ツーバイツー材製の木材は、三番目の男の肩幅の三倍は長い。
 時間経過とともに木材は切断され短くなる。代わりに木片を生む。
 木片はどこへ行く? 一番目の点と二番目の間を常に往復している。テンポが上がる。ドット同士が近づく。木片たちは二点間を駆け回っている。
 遂に木材が最後の木片となった! 木片は三番目から一番目へと供給される。三番目は孤立した点となる。
 青年たちの呼号が川辺に響いた。それまで二人の間だけを行き来していた棒っ切れの軌道が変わる――三人目を受け容れるように、彼に向かって一人目と二人目が道具を投げ渡す。彼から道具を受け取る。道具を投げる、受け取る……。
 木材を乱雑に切っただけの道具を受け止め続けた掌は腫れていたが、彼らの表情から察するに、停めようとする意思など露ほどもないようだった。

 

問三:傍観の語り手
元のものに、そこにいながら関係者ではない、単なる傍観者・見物人になる登場人物がいない場合は、ここでそうした登場人物を追加してもいい。その人物の声で、一人称か三人称を用い、同じ物語(※1)を綴ること。(四〇〇〜七〇〇字)

 「河原の生き物」探しが日課なんだ。野生のトランペッターのゴキゲンなサウンドを聴いたり、揃いのTシャツを着たダンサーたちを冷やかしたり、今日はどんなヤツらがいるんだろうって歩くのが。
 今日の「河原の生き物」は日曜大工に勤しむ三人か。
 部屋でできることでも河原でやりたくなっちゃう。わかるね。けど、ヘンな感じだ。ノコギリギコギコ屋さんが一人だけ。残りの二人は、なんか、手伝わないで遊んでる。切った木を投げて遊んでる。いるんだよなあ。こういう、遊び心をわかってますよって、アピールするヤツら。いや、ゆーておれでもできるな。投げるだけなんだから。
 「河原の生き物」の習性に付き合ってあげますか――と、三人が視界の隅にちっちゃく入るようにベンチに座る。法則が次第にわかってきた。ノコギリの人が木を切って、切ったのを二人が投げ合うっぽい。なるほどね~大道芸系ね~。切っては投げ、切っては投げって感じね。てか、投げんの速くね? 全部切ったと思ったら、いきなりあいつら叫んで、三人で投げ出した。
 で、気付いたら、視界の真ん中に、でっけえ三人がいたんだって。

 

 ***

 

問二には苦心しました。工夫したところもありつつ、冷静に読み直すと何点かやらかしポイントがあるのが無念。

問三は良い感じにニヒルなヤツを描けたのではと自負しています。