「ときメモ2」合成音声(EVS: Emotional Voice System、以下、EVS)の特許は本当にあったのか、調べてみました。
結論
ありました。特定しました(特許3361291)。
前書き
合成音声についての tweet を見て(そういえば、特定されてるのは見たことないな......)と思ったので調べてみました。
ブルーアーカイブにAIキャラが合成音声でプレイヤー名を怪しいイントネーションで呼んでくれる機能があるのだが、怪しさを馴染ませるように「普通のしゃべりも変な発音で読み上げる」という尖った演出をしていて、おもしれ〜と思った(音声合成機能が発達途上なので、という作中エクスキューズがある)
— 氷点下カチコチかもリバー (@xcloche) 2023年1月21日
ユーザー名前呼び機能はコナミが特許を持っていたので長らく利用が制限されていたという歴史があるhttps://t.co/BLTWXs2ZaB
— 氷点下カチコチかもリバー (@xcloche) 2023年1月21日
でもEVSの特許(たぶん99年くらい?)がザッと検索した程度では特定できなくてどういう請求だったのか謎なので単に都市伝説で経済性で誰もやらなかっただけ説はある
— 氷点下カチコチかもリバー (@xcloche) 2023年1月21日
調べ方
1. 特許検索サイト(J-platpat)で、著者所属に「コナミ」、特許請求の範囲(権利範囲)に「音声」、全文に「合成」を指定し、ときメモ2が開発されていたと推測される1990年1月1日から発売日である1999年11月28日までで出願日を区切り、特許を検索した。
2. それらしい発明(以下、発明1、発明2、発明3。なお、発明3のみが特許として登録査定を受け、発明1および発明2は拒絶査定を受けている)が特定された。
3. 共通する発明者「笠井治」についてGoogle検索をしたところ、ときメモ2のスタッフロールに名前があるとの記事およびときメモ3にスタッフとしてEVSに関わっている記事が発見されたので方向性の正しさが確信された。
4. 上記の発明3について深掘りをしたところ、登録されてから15年間(つまり、長期間。2017年10月18日まで)維持されていたことがわかった。大切っぽい。
5. 特許検索サイトで改めて発明者「笠井治」について調べてみると、合成音声に関する発明1~発明3に先立って発明0が発見された(下図に一部を引用)。発明0は、恋愛シミュレーションゲームに関する特許であると明細書(発明の説明)に記載。笠井治氏が恋愛シミュレーションゲームの合成音声に関して長らく開発に携わっていたことが、特許の面からも確認された。
→Happy End...
おまけ1
笠井治氏は、音声合成方法に加えて、下図のように音声編集装置でも特許を出している。このような幅広い特許の取り方が「音声合成をやるだけでコナミの特許を踏む」って都市伝説を増幅させるに至ったんだろうとも思われる。(他社牽制効果が大きい)
おまけ2
同じ時期(1998年2月27日出願)に、パワプロ関連の特許でも合成音声の発明が発見された。なお、発明者は上記の笠井治氏ではない。当時のコナミでは合成音声に関する研究開発が複数のチームで行われていたことが窺われた。
おまけ3
音声合成といえば、『ハヤテのごとく!』のキャラソンCDには、そのキャラ(ぼくはマリアさんが好きでした)が名前を読み上げ続けるパートがあったのに、名前が「しんたろう」的な複雑な名前だったからリストになくて、無念のあまり「しんいち」「たろう」から合成して読み上げて貰った逸話がある。