どうも、吉﨑堅牢です。このたび『七尾百合子の10冊』という本を書きました。タイトルの通り、七尾百合子が10冊の本について語るというコンセプトの一冊です。言うまでもないかもしれませんが、タイトルは『長門有希の100冊』から。100冊は無理なので10冊でした。もっとも、この一冊を書くのに30~40冊は読んだはずなので、あと二冊書いたらそれで100冊ということになるかもしれませんが……。
新刊『七尾百合子の10冊』は BOOTH でも予約中です。メロンちゃんでも近日中に予約開始されます。https://t.co/h6cyzEmIcG#ISF10
— 吉﨑堅牢 【ISF10@E48】 (@yobitz) 2023年5月7日
『七尾百合子の10冊』ですが、本文では以下の10冊プラスアルファを紹介しました。紙幅の都合で(印刷費の高騰がエグくてページ数を増やすことができませんでした)いわゆる「文献紹介」の欄を設けられず、プラスアルファの部分を書けなかったので、ここで一言コメントといっしょに紹介させてもらおうと思います。
一冊目『女生徒』(太宰治)
太宰の告白体の小説。めちゃ繊細なお話なので七尾ちゃんは好んで読むはず、と思ってチョイス。この話を擦るの何回目だよ(覚えてるだけで三回目)って話ですが……。さて、七尾ちゃんの自己紹介がグリマス版からミリシタ版で変わったのには、きっとこういう裏話があったのではと想像しています。私は元の自己紹介が大好きでした。というか、七尾ちゃんをここまで好きになったきっかけの一つでした。自己紹介が変わっちゃったの、私にとっては彼女の魅力のナーフだったんですよね。
七尾ちゃんが小説をラジオで紹介するお話を書きました。リスナー=読者の皆さんも読みたくなる本を紹介してもらいました。毎週末1冊ずつアップするのでお楽しみに。#ISF10 で頒布の4年ぶりの新刊『七尾百合子の10冊』のサンプルです。
— 吉﨑堅牢 【ISF10@E48】 (@yobitz) 2023年5月7日
【1冊目】七尾百合子の10冊【女生徒】 https://t.co/ciKdvKs0ic
他に言及したお話
・『斜陽』(太宰治)
・『富岳百景』(太宰治)
・『グッド・バイ』(太宰治)
二冊目『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川流)
スニーカー文庫ではなく、角川文庫版。たぶんなんですけど、彼女はスニーカー文庫よりも角川文庫の方を手に取る(スニーカー文庫の『憂鬱』ってまだ店頭にあるのか?)方があり得そうだと思います。イラストがないことで、むしろ涼宮ハルヒという人物の等身大性が際立つ気がしています。いとうのいぢ氏のイラストは可愛すぎるんですよね。角川文庫版は挿絵ナシの筒井康隆の解説アリで、独特の雰囲気があります。ところで、『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズはいつ完結するんでしょうかね……。
七尾ちゃんが小説をラジオで紹介するお話です。彼女の本棚から今回はラノベの名作を紹介してもらいました。毎週末1冊ずつアップするのでお楽しみに。 #ISF10 にて頒布の新刊『七尾百合子の10冊』のサンプルです。
— 吉﨑堅牢 【ISF10@E48】 (@yobitz) 2023年5月12日
【2冊目】七尾百合子の10冊【涼宮ハルヒの憂鬱】https://t.co/iXV7Xn7SG2
他に言及したお話
三冊目『夏子の冒険』(三島由紀夫)
三島の作品の中でも圧倒的にリーダビリティが高く、読みやすい。中学三年生に『金閣寺』は無理目(というか読んでも面白さを消化できないだろう)だけど、これには七尾ちゃんでも手が届きそう、ということでチョイスした一冊。本編でも触れましたが、1950年代の北海道の描かれ方が味わい深いんですよね。三島だと『愛の疾走』あたりもいけそう。『午後の曳航』は厳しそう。「他に言及したお話」は全部キツそうという手触りです。三島の遺作となった『豊饒の海』シリーズは殺人的に面白かったのでオススメです(ありえん長い上にハイカロリーで私も全4巻中2巻までしか読んでいませんが)。やっぱりね、イノチを賭けて書いた物語が面白くならないハズがないんですよ。
他に言及したお話
・『愛の渇き』(三島由紀夫)
四冊目『空飛び猫』(アーシュラ・K・ル=グウィン)
ル=グウィンの絵本。何気なく手に取った一冊だったんですが、相当いいシリーズだったんですよね。これは七尾ちゃんは好きになると思うし、北沢ちゃんもそうだと思う。村上春樹の訳もウィットに富んでいてグッド。ル=グウィンと言えば『ゲド戦記』は私も幼い時分に読んだんですが、いま全部読み直すのはハードだったので軽めの本作でお茶を濁したって側面もあります。代わりにル=グウィンの評論集を読んだのでそちらで許して頂けると助かります。もっとも、私にとってル=グウィンと言えば、「ル=グウィン先生のグングン文章が上手くなる!」『文体の舵を取れ』なんですが。こちらは出版年の関係で本文への掲載を見送りました(創作本を七尾ちゃんが読んでる蓋然性も低いですしね)。
他に言及したお話
・『空を駆けるジェーン』(アーシュラ・K・ル=グウィン)
・『素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち』(アーシュラ・K・ル=グウィン)
・『帰ってきた空飛び猫』(アーシュラ・K・ル=グウィン)
五冊目『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
ファンタジーの王道ですよね。七尾ちゃんならマストリードだと思います。エンデの作品から教訓めいたメッセージを抽出するのってどうなのかなと思わないでもない(確かエンデ自身はそういう読み方にやや否定的である)んですが、読書感想文のセオリー的にはこういう読みの方があり得そうですね。ところで、七尾ちゃんが読書感想文を「得意」かどうか(「好き」かどうかとは別のベクトルとして)はかなり議論が分かれそうなところ。私はそんなに評価の高いものは書いていないのではないかと踏んでいます。あれって、巷で言われるような「体験を書くべし」よりも深いテクニックがあるんですよ。
六冊目『火星年代記』(レイ・ブラッドベリ)
七尾百合子と言えばブラッドベリ、トールキン、太宰治ですよね? ということで、ブラッドベリから『火星年代記』。この小説はマジで好きです。『火星年代記』は、9年前に書いた初代『図書室の暴走特急』シリーズでも扱いましたが、当時よりも上手く書ける自信があったので書き直しました。ブラッドベリは文明に対して批判的なところが結構あるんですが、『火星年代記』はそのメッセージがバシッとハマっているんですよね。『華氏451度』よりも決まってる。というか『華氏451度』は世間からの評価の割にはいま読んでみると結末がお粗末だと思うんですよね。ブラッドベリも昔の作家なので仕方ないといえば仕方ないんですが。副読本として読んだ『火星夜想曲』もメチャ楽しい本だったので皆様にもお勧めです。長いんですが。「他に言及したお話」は『霧笛』を除いてどれも長めですね。
他に言及したお話
・『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ)
・『霧笛』(レイ・ブラッドベリ)
・『たんぽぽ酒』(レイ・ブラッドベリ)
・『ワインズバーグ、オハイオ』(シャーウッド・アンダーソン)
・『火星夜想曲』(イアン・マクドナルド)
・『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
七冊目『アッシャー家の崩壊』(エドガー・アラン・ポー)
まず、この場を借りてお礼させて下さい。波戸彼方さん、この本のヒントを下さってありがとうございました。私はミステリの守備範囲が狭いんですが、ミステリ読みの氏のおかげで『七尾百合子の10冊』の深みが得られました。
今回をきっかけにポーをきちんと読みましたが、ゴシックっていいっすね……。私は本作『アッシャー家の崩壊』と『赤き死の仮面』が好きです。視覚に訴える表現が多彩で、特に『赤き死の仮面』は黒死病をモチーフにした流行病のおどろおどろしさを絶妙に描ききった一作。『アッシャー家の崩壊』についても私は同様の高い評価を持っていますが、七尾ちゃんがそれをどう評したかは本文を読んでのお楽しみということで。『七尾百合子の10冊』の全10作の中で『アッシャー家の崩壊』を紹介した回がいちばんよく書けたと自負しています。
他に言及したお話
・『黒猫』(エドガー・アラン・ポー)
・『モルグ街の殺人』(エドガー・アラン・ポー)
・『赤き死の仮面』(エドガー・アラン・ポー)
・『落とし穴と振り子』(エドガー・アラン・ポー)
・『早すぎる埋葬』(エドガー・アラン・ポー)
八冊目『南部高速道路』(フリオ・コルタサル)
オタク(クソデカ主語)はみ~んな『南部高速道路』が好き。『ビューティフルドリーマー』くらい好き。なので、七尾ちゃんにも読んでもらいました。ここはお話のリアリティよりも私の好みを優先させてもらった次第です。サブで登場した福田ちゃんもこのお話を好きになってくれるといいなあと思っています。「他に言及したお話」は七尾ちゃんがギリ読める上限を突いたいいラインナップだと自画自賛しています。
他に言及したお話
・『族長の秋』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
・『ペドロ・パラモ』(フアン・ルルフォ)
・『伝奇集』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス)
九冊目『人間の土地』(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
私、サン=テグジュペリがメチャ好きでして、中学生の頃にはクリスマスに『サン=テグジュペリ全集』(みすず書房版)を買ってもらったんですよ。どのお話も勇気づけてくれるんですよね。そういう事情もあって、前作『七尾さんたちのこと』でも巻頭言として使わせてもらいました。言うまでもなく『砂漠』(伊坂幸太郎)の影響下にあるんですが……。本書に「一冊の本」としてのオチをつけるためにこの本をチョイスしました。なぜこの本を選んだのかは本文を読んで下さい。ところで、『人間の土地』には、複数のバージョンがあって、七尾ちゃんが読んでたのは絶対に堀口大學訳の新潮文庫版だと思います。お話としては彼女にバチバチに刺さってくれるでしょう。
他に言及したお話
十冊目『心とろかすような マサの事件簿』(宮部みゆき)
こちらはミステリ読みの知人に寄稿して頂きました。ありがとうございます。トリを飾る10本目に置かれたのには明確な理由があって、本書を頭から読んで頂けるとそのワケがわかるかと思います。『心とろかすような マサの事件簿』についても、『アッシャー家の崩壊』と同じくミステリ方面での深みを与えてくれました。
最後に
本書の七尾ちゃんは、様々な方々からの協力を得て「本読み」としてのキャラクターが立ったんだと思います。改めて、皆様に感謝を。
P. S.
本書は『やりなおし世界文学』(津村記久子)と『100分 de 名著』シリーズ(NHK出版)とその他様々な解説書に支えられて完成しました。生真面目なタチなので10冊とも解説書とその作家の代表作を読んでから書きました。そういうワケもあって荒行に近い本書でした。執筆中は趣味の本もぜんぜん読めなくなっちゃったしね。したがって、『七尾百合子の20冊』は出ません、多分。海外文学の比重が高めの本書ですが、ガイブンの解説を日本語でこうも簡単に読めるのは、我が国の文化も捨てたものではないと思わされますね。頼む……、今後もこんな環境が続いてくれ…………。
P. P. S.
四年ぶりの同人誌でした。しばらく離れている間に印刷費がバカみたいに高くなっていたので仰天しました。この価格感では、学生のお遊びとしての「同人誌趣味」はやってられなかったと思いました。いや、マジでスゴいんだって。印刷所の価格表を見てみて、プラス謝礼金を考えてみて、1冊500円とかでトントンにできるかどうか算数してみて欲しい。到底無理なので。本書は、一作一作丁寧に扉ページを入れてたらページ数が嵩んでしまったのと、表紙の箔押しドン!で印刷費がスゴいことになっています。売上に既刊の分を算入したとしても、一回のイベントではたぶん「赤」です。皆様の助けが必要です。何卒よろしくお願いします。何卒……。
P. P. P. S.
このエントリで使ってるアフィリエイトについて、この前 honto のやつに申し込んだら落ちたので(アフィリエイトに落ちることってあるんだ!?)Amazon のやつを引き続き使っています。皆様からのご支援は、私の食料や肌着や靴になります。ありがとうございます。