箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

220528 かぐや様にハマりたい

先週末にテレビアニメ『かぐや様は告らせたい』、『かぐや様は告らせたい?』、『かぐや様は告らせたいーウルトラロマンティックー』全部観て、月曜一日で全巻読みました……。実質2日で30話近く見て、丸一日で25巻読んだのがそのまま作品への評価です。

萌えたので萌え萌えSS書きました。

pixivに上げるには短すぎるのでこちらに。

原作15巻の直後のイメージです。

「四宮かぐやは撮影したい」

 クリスマスイブの銀色の月にクリスマスカラーの真っ赤なけん玉の「玉」が重なって、まるで、一年以上をかけて思惑を重ねることができた私たち――会長と私を祝福しているようでした。宙に浮いた玉をけん玉の「けん」に刺そうとすると……。
「えいっ」
 刺そうとしても……。
「えいっ、えいっ」
 どうして刺さってくれないんですか……! もうっ! ひとがせっかく感慨に耽ろうとしているところに小癪な……。さっきのは偶然だったと言うのですか! 歩きながらけん玉に夢中になっていた私は、会長に呼びかけられるまで、後ろで足を止めていたことに気付きませんでした。
「なんだ、四宮、けん玉は初めてか?」
 会長は見慣れた、険のある瞳で私を見つめていました。いつもながら恰好良いこと。威圧感を与える(それが「いい」のだとどうして誰もわからないのかしら!)目つきとは裏腹に、口元は緩んでいました。
「はい。家ではこのような玩具で遊ぶことはありませんでしたから」
 四宮家らしいな、会長はそう笑って右手を差し出しました。日々のバイトでゴツゴツになった手の平と指、そしてペンだこで膨らんだ中指の第一関節。この人の努力を想うと自然と私は彼の手を取ろうと……。
「俺に任せろ。責任があるからな」
 クリスマスに責任ですって!?
「会長が責任、取ってくれるんですか」
 大きく首肯した彼の姿に、私は自分の頬が真っ赤に染色され、熱を帯びていくのを自覚せざるを得ませんでした。
「もちろんだ――道具を贈った側は、贈られた側に教える責任があるからな。けん玉を貸してくれ」
 ああ……、そういうことですの。そーいうことですか。
 けん玉を手渡すと、自分の頬に宿った熱がサーッと引いていくのを感じました。
「けんに刺す前に、大皿、中皿、小皿の順に練習していくのが適切だろう。俺の膝を見てくれ」
 玉に繋がった糸を垂らすと、ほとんど屈伸運動かのように深くしゃがみ込みました。そして、膝を伸ばすと玉は宙に浮き、やがてそこにあるのが自然であるかのように大皿の上に着地しました。しかし……しかし会長は意地悪なお方です。私を愚弄したにもかかわらず、ひとり楽しくけん玉に興ずる様子はまるで子どものようで――お可愛いこと。
 その愛おしさに私は思わず切り出していました。
「練習の参考のために撮影してもよろしいですか?」
 会長は意外そうな顔を私に向けました。
「俺なんかよりユーチューブの方が勉強になるぞ」
「会長だからいいんです」
 わかっていませんね。
「冬休みに練習するつもりなんですから、真剣な顔でけん玉してください」
「そ、そうか。じゃあ順に行くぞ」
 カメラアプリを立ち上げていた私のスマホの画面が突如切り替わり、巨大な音を発し出しました。藤原さんからの着信。
「かぐやさーん! まだですかー」
 このゲーム脳は!
「仕方ないなだろ、抜け出したのは俺たちなんだから」
 会長は足早に藤原邸宅に向かい、けん玉も撮影も立ち消えになってしまったのでした。

 ――今回の勝負、かぐやの負け(会長の動画を欲しいと素直に言えなかったので)