箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

170806 おしらせ

 物語は情報や報告のように純粋にそのこと「自体」を伝えるものではない。物語はそのことを語り手の生の中にいったん沈めてからもう一度取り出す。だから、陶芸家の手の跡が陶器の皿に残るように、語り手の跡が物語に残るのだ。
――ヴァルター・ベンヤミン「語る人」

 

 C92の新刊『アイドルのための物語』を入稿しました。そちらについてはトップの告知用のエントリをご参照下さい。このエントリは別件についてのおしらせとなります。

  今夏の新刊『アイドルのための物語』を最後にしばらくサークルInterface-Tracking ENGINEとしての同人活動のペースを落とします。前回のは「本業の多忙につき」が理由の期限付きの休止だったんですが(そもそも11月から5月の6ヶ月間しか発表を休止していなかった。2014年9月にサークル活動を開始してから、関わった同人誌に7ヶ月以上の間隔が開いたことがなかった。今思えば異常なペースだった)、今回は複合的な理由からすこし長めのお休みになるかと思います。心変わりしたとしても、短くとも丸1年はいまの「A5で2段組60ページ3万文字前後」みたいなのはないかな。

 とりあえず10月2日のカラマス4には既刊と、気分が乗ったらペーパーなんか出したいですね。『ミリオン女学園3期 茜×百合子×志保 10,000文字インタビュー』とか今なら書くことができる気がするので。

 1年目の本業はまだ忙しくもなく、たぶん冬コミ目処なら書けちゃうだろうし、ネタもないことはない。でも今回の原稿をやりながら、それまで冗談交じりに言っていた『文庫本で300ページくらいのやつ』をやってみたくなったし、そのためにはざっと見積もってこれまでのペースで4倍5倍の準備期間がいるらしい。それだけで年単位のプロジェクトですね。

 もうひとつの理由はこれはマジの話なんですが、真剣に勉強してキャリアアップしたくなりました。資格を取ろうと調べたら必要勉強時間3,000時間?とか書いてあった?のでこちらも年単位。

 資格勉強しつつ片手間に考えたり書いたりして、いちばん上手くいって再来年の夏コミかその次の冬コミかな~みたいな予想。2019年?2020年?その頃には渋谷のPARCOも生まれ変わっているんだろうし、この情熱も残っているかわからない。きっと(間違いなく)いまの読者の方々も別の生活をされていることでしょう。

 それでも、僕は次の本だけは書きたい。20代前半の僕が彼女たちのことを大好きだったこと、あの場に想いを馳せ続けていたことの総決算はされなければならないと。

 アマチュア作家の同人活動って、祈りや営みの複合体だと信じている。つまり、洗練より祈りを優先してしまいがちで、アマチュアだから最近食べたものの影響があまりに大きすぎる。僕はアマチュアでい続けるから、そのことに対しては肯定的なつもりでいる。同人誌って、要するに、作者の人生のある期間の映し鏡なんですね。節目を大切にして生きてきたから「ある期間」を総括したい。

 もっとちゃらんぽらんに生きていけたらよかったのにって思わないことも少なくないけれど、そういう生き方しか送ることができなかったしきっとこれからもそうなんだろうなあって。愚かさに呆れつつもそういう自分が好きだったりして、でも果てしなく独善的だったから続けられたところもあって。もっと丁寧に器用に生きていけたらよかったのに。

 そういうことで、しばらくは同人誌が出ないかと思います。

 またいつかの(今度は分厚い)本で会えたらって、心の底から祈っています。

 とりあえずは次の本をよろしくね。