箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

15/09/22 『雪のゆりかご』あとがき

『雪のゆりかご』のあとがきです。

このエントリはできれば『雪のゆりかご』本編を読んでからにしてください。本編を読んだらそれだけでもいいのだけれど。未読ならこんなエントリ読んでないで本編を読んでくれ。頼むから。

本の方は格好付けたのを書いちゃったんで*1、ブログの方には舞台裏みたいなのを書き残しておきたいと思います。あらすじの通り、七尾・北沢・高山がユニットを組んでわちゃわちゃとする長めのお話です。面子は私のミリオンライブ!内の基本ユニットです。

ところで、このエントリを打ってる段階*2で3時間前に本編を書き上げて2時間前に脱稿して、今まったく言語機能が使い物になっていないことをご了承ください。

閑話休題

ミリオンライブ!を知ってから*3ずっと悩んでいたことのひとつに「どうして七尾百合子はアイドルになったのか」ってのがあったんですよね。「どんなアイドルになりたいのか」ってのもわからなかった。本人言うところの「記憶に残るアイドル」、大いに結構だと思うんですけど、具体性ないじゃないですか。そういう展開もされてこなかったし。展開ついでに愚痴になると公式が彼女の人見知りの設定を使い倒さなかったのもったいないよね。で、彼女がどうしてアイドルになって、どんなアイドルになりたいのかってところに戻りますが、私には彼女がアイドル一般に憧れを持っていたとはなんとなく思えなかったんですよ。かれこれ1年と半の間ずっと彼女についてだけ書き続けていても、その辺がよくわかんないままだったんですよ。そういうモヤモヤがあったのが、この本であらためて*4最初から書いてやった理由です。アイドル一般に憧れを抱くようには見えなかったので、だったらAS組の誰かに憧れたんだろうなと。じゃあ誰がいるって考えたときに出てきたのが萩原でした。萩原雪歩です。公式だとぜんぜん絡んでないけどね。最初から書いてやるとそこらにウソを付けます。付きました。劇場版だと七尾は萩原宅に行ったりしてますが、目立つ会話みたいなのは特になかったですね。なぜ萩原雪歩になったのか。「ファースト・ステップ」ですね。アイドルマスター2萩原雪歩にだけ与えられた固有曲*5です。うじうじしていた萩原がアイドル活動のかたわらに書き溜めていた詩を元にして、彼女のプロデューサーに贈った歌でした。ハリウッド研修へと旅立つプロデューサーは彼女の歌が出来上がるのを待たずに出国してしまうものの、1年間の研修を終えて帰国した彼を待っていたのは完成した「ファースト・ステップ」。空港には彼のアイドルの歌声が響いていた。そんな感じの超いい感じのバックグラウンドを持つ歌です。超いい感じの背景を持つにも関わらずアイドルマスター2の萩原ルートでしかお目にかかれないし、アルバム『THE IDOL M@STER 生っすか!カーテンコール』にしか収録されていない超マイナーな楽曲です。ライブでは1回? 2回? ほど歌われたと聞きました。とにかく、萩原が彼女の大切な人へと作曲した歌です。私自身もけっこう好きな楽曲のひとつです。で、七尾がアイドルを目指した理由を考えたときに、こりゃ使えるぞと思ったんです。読んで書いて歌って踊れるアイドルってすごいじゃん、憧れるって! みたいなノリでした。それとも、この曲をなにかに使いたかったのに理由をこじつけていたのかもしれないけどね。というのが一本目の裏話。三本目はああいう感じのラストに上手いこと落ちてくれたんでよかったんですが、締切近くまであのオチは思い浮かんでいなくって、さっさと気付けやと反省しています。萩原だったのはそんな感じの理由でした。どんなアイドルになりたいか、って方もしたがって萩原をモデルにするなら読んで書いて歌って踊れるアイドルかなってところで、二本目はああいうテーマになりました。出落ちではないです。あれに関しては、テーマ、舞台、エピグラフの順番で考えて、エピグラフを引けた時点でこれなら舞台は別のテーマにした方がいいぞと、舞台は書き換えました。ボラーニョのを引っ張れた時点で勝ったと思いました。オタクは自己言及構造が大好きなので。自己言及する舞台と自己言及するエピグラフ。トータルであれくらいの文量ならステージには強い意味を持たせたかった。そういう感じのが二本目で、作業時間はいちばん短かったですね。いちばんしんどかったのが三本目。上にも書いた通りオチが湧いてこなくて締切は近づき生活はいよいよ破綻しかけ、というところでやっと降りてきてくれました。長かった。これに限らずラストシーンはたいがい円城塔の『Self-Reference ENGINE』を参考にしてますね。ラストシーンというか、サークル名もENGINE系列*6*7を参考にしてます。今回の三本目は成海七海さまの超キレイな表紙イラスト*8が先にあって、そこに持っていくには~みたいなのを考えながら組んでました。楽しかった。スノーフレークリリパット、いいですよね。お願いしたときに考えてたイメージの77000000000倍はイカしたイラストを頂けたので、スノーフレークリリパットにガッツリ乗っかることにしました。モチーフの獲得と脱皮ですよ。ああ、あと冒頭の『人間の土地』のやつですね。大地は万巻の書より多くを教える、のやつ。七尾と本からいちど離れてみたかったんですよね。本の他から教わってほしかった。これくらいでしょうかね。ここまで読んでくださってありがとうございました。ご意見ご感想をお待ちしております。またどこかでお会いしましょう。

*1:本にするんだから格好付けるよね?

*2:2015年9月16日17時ごろ。このエントリは予約投稿されました。

*3:私は劇場版からだった

*4:あらためて、なんですよ。普段は劇マスとゲームのちゃんぽんの世界に乗っかってるから

*5:ズルい! ちーちゃんにもほしい!!! 歌姫だぞ!!!!!! なーにがツバメじゃい!!!!!!!! って思ってました。ツバメはないよね。

*6:ディファレンス・エンジン』『the Indifference Engine』『Self-Reference ENGINE

*7:長すぎて不都合があるからそろそろ変えようかと思っている。

*8:超きれい

『ユは百合子のユ』訂正と個人通販のお知らせ

訂正

・p3 (目次)

 誤: 風の中にはない | 濁流 …… 34 ふしぎな東急百貨店 | マラルメ牛乳 ……42

 正: ふしぎな東急百貨店 | マラルメ牛乳 …… 34 風の中にはない | 濁流 ……42

・裏表紙 作品紹介

 誤: 「風の中にはいない」

 正: 「風の中にはない」

 

 吉﨑のミスで本に瑕疵が発生しましたことを深くお詫び申し上げます。

 

ミリオンリー告知

告知

イベント概要

4月19日(日)大田区産業プラザPiO

歌姫庭園7内アイドルマスターミリオンライブ!オンリーイベント

「MILLIONLY THE@TER 3」(ミリオンリー)

「ミリ28」〈the Interface-Tracking ENGINE〉

〜アイドルマスター ミリオンライブ!(シアター組)オールキャライベント〜MILLIONLY THE@TER

七尾百合子メインの小説本『ユは百合子のユ』を頒布致します。

表紙イラストはツダタカシ様です。

 

新刊案内

『ユは百合子のユ』

――透明な清潔な風を感じないのか。 七尾百合子は今日も風の声を聞く。ステージで、劇場で、日常で。高山紗代子とマイティセーラーの撮影に励む日々を描いた「陽光階梯」「涼風回廊」。パンクロック少女との読書歓談に文学少女は驚くべき過去を知る「風の中にはいない」。一本の電話が町の記憶を呼び覚ます「ふしぎな東急百貨店」。あなたと彼女の眼差しが生成する詩的世界「My Own Keeper」。風の戦士に送る待望の七尾百合子アンソロジー、ここに登場。(裏表紙より抜粋)

 判型: A5 2段組 68ページ

 頒価: 500円

 イラスト: ツダタカシ様

 主筆である私、吉﨑堅牢(以下、リンク先はpixivページ)を始め、ゲストの濁流(ニゴリ ナガレ)様、マラルメ牛乳百目身空様による七尾百合子の小説アンソロジーとなっております。

 高山紗代子とマイティセーラーの撮影をするなかで交換日記を通じて友情を育んだり、あるいはジュリアとの読書トークに花を咲かせたり、はたまた幻惑的な世界に取り込まれたりと、様々な七尾を描いた一冊となっております。

 例によって個人通販を行いますので遠方の方もご安心ください。

 

『ハルノヨソオイ』

 表紙を描いているツダタカシ氏の新刊です。スペース「ミリ63」、サークル「おもちもちもち」にて春日未来ちゃんのコメディタッチな本を頒布されます。

 

既刊案内

『空想文学図書館』

七尾百合子はステージと空想の世界で舞い踊る十五歳のアイドル。そんな彼女が松田亜利沙とロコの三人で夏のフェスに挑戦する「サンキューサマー、グッドバイ」やアイドル活動と恋に捧げる青春の日々を色鮮やかに切り取った書き下ろし連作「ある日の風景」、本を語り尽くす好評シリーズ「図書室の暴走特急」に加え特別寄稿「明日の北風伯爵」「五十円玉の謎と三人の推理」を収める。濃密でバラエティ豊かな物語の詰まった図書館のような一冊をあなたに。(裏表紙より抜粋)

 判型: A5 2段組 68ページ

 頒価: 500円

 イラスト: ツダタカシ様

 2014年11月30日のMILLION FESTIV@L!!にて頒布しました『空想文学図書館』も持っていきます。なお、こちらは残部が残り少なくなっておりますので確実に手に入れられたい場合は吉﨑(twitter@yobitz)までご連絡ください。

 

 それでは、4/19はミリオンリーにてお会いしましょう。

15/02/18 七尾百合子の運命観に関して

  七尾百合子のアイドルとしてのキャリアを『運命』の使い方の変遷から読み解きたい。真っ先に目に入るあいさつの台詞では

『私、何だか最近プロデューサーさんに運命を感じます。これって、もしかして、前世で何か因縁が……?』(あいさつ)(2013年3月)

とロマンチックな使い方をしている。

あるいは

ここにタイムマシンがあればいいのに。私、学生時代のプロデューサーさんと運命について語り合いたいです。(アイドル学園天国 グッドチョイス)(2013年4月)

 しかし『運命』という言葉に込める意味は変わって行く。やがて

『ステージの上には、神も運命もありません。この場所に立てるのは、私たちアイドルだけ!』(アイドルユニットトーナメント ライバル)(2013年7月)

『また3人でユニットが組めるなんて! これは運命……じゃなくてプロデューサーさんのおかげですね! 今年最後の大舞台、最高の夜をお届けします!』(トリプルエース! 七尾百合子)(2013年12月)

 と、『運命』なるものに懐疑的な解釈をするようになる。

 この2つの台詞の『運命』はアイドルがステージに立つことそのものに伴う、たとえばオーディションやライブの企画のような、即物的な困難を指している。

 打って変わって最新の「透明なプロローグ 七尾百合子」である。

『今年もみんな……いえ、風の戦士とともに、駆け上がってこれました! まだ見ぬ運命に向けて、飛躍の力を私にください……!』(透明なプロローグ 七尾百合子)(2014年12月)

 と呼びかけている。この文脈では『運命』の指すスパンはこれまでより長い。

 

 これら『運命』の使い方の変遷に、彼女の一種のロマンティシズムの消失と再獲得を発見できると私は考えている。アイドルをはじめた当初は運命なるものに漠然とした憧れを抱いており、彼女はその言葉に自分自身のアイドルとしての出発点とまだ見ぬ未来を重ねていた。

 しかし実際に活動を行う中で現実の厳しさシビアさを体験してしまったのだろう、『運命』とはまさにそこに現前する障壁だった。夢をそのまま現実にしてくれるものではないということを口にするようになった。そして、アイドルとしてのキャリアを築いて2度目の年末ライブである。ここでの『まだ見ぬ運命に向けて飛躍の力をください』はそれまでの二つとは意味合いが違ってこよう。確かにこの運命は確かに不安を意味している。だが、未来だ。彼女はアイドル活動を続ける中で、近視眼的な困難から将来に目を向ける余裕が生まれたのだ。

 漠然とした未来から、いまそのとき、そしていまと繋がる未来へと『運命』という言葉の使い方が変わってきた。

 さて、「透明なプロローグ 七尾百合子」のスキル名は『私の物語』である。彼女の物語はまだ続く。七尾百合子が自らの物語の頁を繰り進め、挫折し、成功し、肯定し、やがて来るだろう最後の頁で、後書きで、自らの物語を『運命』をどう評するのか私は楽しみでしょうがない。

 

P.S.

 2014年2月のバレンタインキャラバンでは

『……うーん、最後の文を『運命の恋』にするか、『甘い誘惑』にするか……プロデューサーさんならどっちの方がもらってドキドキしますか?』(バレンタインキャラバン グッドチョイス)(2014年2月)

 と『運命の恋』という言葉を使っている。時期的にはここでの『運命』は漠然とした未来より実体を持った現実を指している。そう考えると、ちょっとだけ微笑ましさも増すだろうか。

14/12/29 SS書きました


「百合子「マイティセーラー?」」/「吉﨑堅牢」の小説 [pixiv]

 

  書きました。

 七尾百合子と高山紗代子がテレビドラマの撮影をするお話です。

 高山の誕生日に合わせてアップロードしましたが、特に誕生日は関係なく、アイドルヒーローズの時期に合わせて春ということになっております。

 来春の歌姫庭園7ではこの二人と日記を軸にして本を出せたらなと思っています。

 年内は七尾の大晦日の短くてエモなやつをあと1本だけ書くつもりです。その後は、卒論が終わるまでお預けでしょうかね。

続きを読む

『空想文学図書館』個人通販について

15/04/22 追記

 おかげ様で完売しました。ありがとうございました。

追記終わり

 

 MLLION FESTIV@L!!で頒布しました七尾百合子の小説本『空想文学図書館』を送料込み700円で個人通販しています。

続きを読む