箱庭療法記

人々がきらきらする様子に強い関心があります。

200805 『クレッシェンドで進め』が良かった話

年齢を重ねるにつれて友人を作るのは難しくなるものだと聞くが(そして初めて聞いたときは鼻で笑っていたが)年齢を重ねるにつれてどうやらどんどん真実味を帯びてくる。

こんな折だから知人以上ダチ公未満みたいな集まり(そういう催しが大好きだ)に参加するワケにもいかず、悶々とした日々を過ごしていたらば、古い友人から「お前は絶対に好きだから読め」と漫画を勧められた一冊がこのエントリで紹介する一冊。

彼も私も地方の公立進学高校から都会のいわゆる旧帝大に進んだ、この一冊の登場人物と背景を共有する、当時は17-18歳の理系クラスで、今はアラウンドサーティです。

 

宇仁田ゆみで『クレッシェンドで進め』。

クレッシェンドで進め (楽園コミックス)

クレッシェンドで進め (楽園コミックス)

 

「最後のセンター試験」を控えた高校三年生が夏前に迎えた、校内コーラス大会のお話。

曲目決めからパート分け、練習を乗り越えて本番……と出来事だけ書き連ねてしまえば驚くほどにあっという間だ。そもそも1クラスの群像劇をやるには、単行本1冊では駆け足になってしまうのだ……。

しかし、『クレッシェンドで進め』の駆け足感は、まさに高校3年生のあっという間の夏の雰囲気を醸し出すことに成功している。

そこかしこに恋や、淡い憧れの予感が満ちている。

文化委員の男子の視線の先にいる文化委員の女子は、伴奏者の無造作な髪と猫背を見ており、その猫背はお団子ヘアーの活発な女性に頬を赤らめる……。1クラス分の人間関係をこうした「予感」に留めることで、想像の余白を生んでいる。

想像の余白はあるけれど、その先は描かれない。

余白に描かれることが期待される決定的な瞬間は、読者には閉じられている

やがてその期待は、一大イベントのお祭り騒ぎのムーヴメントに浚われて、どこかに行ってしまう。

高校三年生の夏は、いつまでも期待に足を止めていられるほどヒマじゃなかったはずだ。

ああ、この漫画は、あの日を過ごした俺のための漫画なんだな……と涙ぐんでいると、やがて「最後のセンター試験」が単なるアクセントなのではないことを思い知ることになる。

200504 ホワルバ2(PC版, cc)をGWにやってた話

WHITE ALBUM2』(以下、WA2)の「closing chapter」(以下、cc)をプレイし直した。

2011年発売のゲームだから、いまさら周囲で話題になるのもどちらかといえば思い出話がメインで……というゲームだった。(通信手段が携帯電話だった時代感もあるし、なにより「ノベルゲーム」という形式がメインストリームから外れてどれくらい経つだろう)

けれど、なんと2020年になって初プレイの友人がポップアップ。

しばらくはネタバレをしないよう茶々を入れつつ、いずれプレイを終えたら彼を囲んで当世風のオンライン飲み会で語らおうではないかと思っていた。しかし、わらわらと既プレイヤー同士で思い出話に花を咲かせるものだから、普通にプレイしてしまった。

かいつまんで再発見したことや、変わらず感動したことなど。

なお、ネタバレには配慮しません。

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200318 鍋に指輪を擦って生きていく

大切なお知らせ

日頃より吉﨑の活動を応援してくださっている読者のみなさまに向けて、大切なお知らせがあります。

一部報道にございました通り、このたび、吉﨑は大切なひとと婚約しました。

届け出は9月に行う予定です。

変わること、変わらないこと多くあるかと思いますが、みなさまにはこれからも変わらぬご声援のほどをいただけますと幸いです。

(文責・吉﨑)

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200222 高山紗代子に「他の星から」やってほしい話

 

アイマスも乃木坂も「他界」して長く、にもかかわらず、「他の星から」を聴くたびに想うのです。

「他の星から」を高山紗代子にやってほし~~~~~~~

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200112 最近読んでいる漫画について

2019年の10月ごろから急に漫画を読み始めたので、備忘録を兼ねてまとめます。

2019年の春ごろまで、元より追っていた漫画家の漫画か、購読している雑誌に掲載されている漫画か、周りでの評価が固まった漫画かを読んでいたものの、ふと、自分でも探して読んでもいいのでは(むしろその方が好みに合致した漫画を見つけられるのでは)と気付きました。そのため、やや期間が空いたものの、冒頭に書いたように秋ごろから本屋で漫画コーナーをチェックするようになりました。

2019年春以降に読み始めて、2020年1月現在で連載を追いかけている漫画をいくつか紹介します。

 

『水は海に向かって流れる』(田島列島

いわゆる男女シェアハウスもの。男子高校生の主人公・直達くんは、同じ屋根の下に暮らす26歳女性会社員・榊さんが「父の不倫相手の女の娘」だと知ってしまい――。

同じ屋根の下の住人同士でも、互いに住人について知っていることにはバラつきがあります。

例えば、シェアハウスの住人の一人に「おじさん(直達くんの母の弟)」がいます。彼は「姉の夫」が不倫していたことを知らず、直達くんは「父」が不倫していたことを知っています。このようにして、「父の不倫相手の女の娘」である榊さん関して知っていることについて、バラつきが生じています。

本作では、そのようなバラつき、情報の格差から起きてしまったトラブルに深い人間味が感じられます。有り体に言って、人間の観察があります。

こういうイベントちょっと羨ましいね、と、こんなトラブル本当に起こったらたまったもんじゃないですわ、の間を上手く縫ったストーリーが魅力です。

水は海に向かって流れる(1) (週刊少年マガジンコミックス)

水は海に向かって流れる(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

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190930 お知らせ

 

私、吉﨑堅牢が代表を務めるアイマス小説サークル Interface-Tracking ENGINE は、2019年9月29日のカラマステンへの出展をもって活動を完了しました。

2014年9月に the Interface-Tracking ENGINE としての活動を開始し、この5年間、読者のみなさまや、友人のみなさま、ご協力くださったみなさまに支えられて、数々の小説を発表することができました。

深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

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